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「通訳者のひよこたちへ」更新のお知らせ [掲載]

「通訳者のひよこたちへ」第425回がアップされました。
タイトルは『暗譜』、書籍紹介では「オーケストラ指揮者の
多元的知性研究―場のリーダーシップに関するメタ・フレームワークの
構築を通して」(宇田川耕一著、大学教育出版、2011年)を取り上げました。

https://www.hicareer.jp/inter/hiyoko/16788.html

お時間がございましたらご一読いただければ幸いです。
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ネット時代の恩恵 [日々の暮らし]

インターネットやSNSの功罪にはいろいろあると言われます。

情報を瞬時に手に入れられる良さがある一方、
依存症になりがちだという欠点もあります。
SNSは人々をつなぐ貴重な手段ですが、それが原因で
10代の自殺者が増えたという深刻な問題も出てきています。
過日、CNNのAmanpourという番組の放送通訳をした際には
アメリカの社会心理学者Jonathan Haidtがそれについて
意見を述べていました。英文スクリプトはこちら:

http://transcripts.cnn.com/TRANSCRIPTS/1912/04/ampr.01.html

この番組は実はPBSでも配信されていたのですね(知りませんでした!):

http://www.pbs.org/wnet/amanpour-and-company/video/jonathan-haidt-explains-how-social-media-drives-polarization/

さて、そうしたSNSやデジタル時代の問題点が指摘される一方で、
私自身は「ありがたいなあ」と思うことを最近体験しました。

ヤンソンス関連で色々と検索していたところ、見つかったのが
イギリスの音楽評論家Norman Lebrecht氏のサイトでした。
Slipped Discというタイトルで、音楽情報を氏は発信しています。
Lebrecht氏と言えば、BBC Radio 3(クラシック専門ラジオ局)で
看板番組もありますし、主要紙に寄稿もしている
著名な評論家です。イギリスでも絶大な信頼を集める方です。

そのSlipped Discにはヤンソンス亡き後に色々と情報が
アップされていました。葬儀の日時から追悼番組にいたるまで、
そしてもちろん、各界からの追悼メッセージなどもです。
私一人では探し切れない情報がここには集約されており、
とてもありがたく思いました。

それぞれの記事エントリー下にはコメントを書く欄もあります。
新聞で目にするあのLebrecht氏のサイトにおいて、しかも
氏の文章の下に私のコメントをつけるなど
とても恐れ多いと私は一瞬怖気づいてしまいました。
でも、せっかくですので1,2行のコメントを書いて送ってみたのです。
ネット上のこうしたコメントは、氏の承認後にアップされるそうです。

Enterキーを押して翌日、また覗いてみたところ、私のコメントが
掲載されていたのには驚きましたね。と同時に、嬉しくも思いました。
ネットが無かった時代には、私にとって雲の上の
音楽評論家という位置づけでした。ですので、そうした垣根が
今や取り払われたのはありがたいことだと思います。

と同時に、掲載していただいても恥ずかしくないような
英文を書かねば、さあ、英語の勉強だ、とまたまた
気合が入ったのでした。
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demanding [日々の暮らし]

ロンドンで大学院生活を送っていたころ、課題の多さと
プレッシャーについてクラスメートとこぼしあったことが
あります。非英語圏から来た私だけかと思いきや、
ネイティブで、しかもその分野に精通していた院生たちでさえ、
口々にその大変さを述べていたのです。私としては
意外でしたね。

そのときによく出てきた単語の一つがdemandingです。
「要求が高い、大変だ」といったニュアンスです。
This course is so demandingなどのフレーズをよく耳にしました。

先日BBCのRadio 3で聴いたヤンソンスのインタビューでも
この言葉が出てきました。10代にレニングラードへ移住し、
音楽大学で学んでいたときのことを振り返っていたものでした。
「大変ではあったが(demanding)、非常に素晴らしい
音楽教育を受けられて良かった」という趣旨を
ヤンソンスは述べています。

ところで過日担当したCNN World Sportsでは興味深い
ニュースがありました。NFL出身で現在はCNNのスポーツ記者を
しているCoy Wire(ちなみに日本人の血が流れているそうで、
名前のCoyは「恋」から来ているそうです)の体験レポートです。

彼が体験取材したのは海軍士官学校のトレーニング。
午前2時半から翌日の午後2時半まで行われるSea Trialsという過酷な訓練です。
Coy自身体力がありますが、それでも非常にきつかったと
番組で述べていました。「頭の中で常に『一体なんで
こんなことを自分はやっているんだろう?』『きついんだから
やめちゃったら?』ということばが常にあった」と
語っています。

けれどもこれほど大変な訓練を仲間と共にやり遂げたという
達成感や自信も非常に大きかったと述べていたのでした。

Coyによれば、近年はアメリカでもスポーツ選手が弱弱しく
なったと感じるそうです。その理由として、監督が
昔と比べて厳しくしづらくなったからとのこと。
以前であればきついトレーニングを課していましたが、
最近はそうしようものなら、あとでロッカールームで
陰口をたたかれてしまうというのですね。
監督も人間ですので、悪く言われるのは辛いのでしょう。

そう考えると、芸術、学問、スポーツなど様々な世界において
昔であればdemandingだったことも最近はそこまで要求されなく
なってきたように感じます。たとえば以前であれば必死になって
単語を暗記して厳しい通訳訓練に耐えてといった指導法も
今では廃れてしまっています。暗記しなくてもネットで
調べれば即座にわかる時代なのです。

それはそれで時代の流れなのでしょう。けれども私自身振り返って
みれば、あの辛い辛い大学院生活は自分にとって今や
宝物です。あの日々があったからこそ、ヤンソンスの指揮に
感動したのでしょうし、ロンドンにおける外国人留学生
としての孤独感(今より留学生が少ない時代でした)を味わうことが
できたのです。ギリギリのところに追い込まれていた分、多くのことが
心の中に染み入り、物事を考えるきっかけになったのだと
思っています。

demandingということば。

そのさなかにいる者にとっては大変なことですが、
私はそれでもそこに意味を見出したいと思っています。

Coy Wire記者のインタビュー動画です。私が担当した日付よりも
かなり前にすでに類似の動画がアップロードされていました:

https://edition.cnn.com/videos/tv/2019/10/15/coy-wire-sea-trials-navy.cnn

いやぁ、すごいです!!
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決断した後どうする? [日々の暮らし]

12月14日の日経新聞別刷りに興味深いことが書かれていました。
「元気のココロ」という連載。執筆者は神田東クリニック院長の
高野知樹先生です。副題は「進む道、決めた後は迷わずに」です。

印象的だった箇所を抜粋します。

「重要なのは決断した後のふるまいだ」

「気持ちの『迷い』は進む道を良くしていく力をそぎ落とす」

高野氏はスタンフォード大学のクランボルツ教授の
概念を紹介しています。「偶発性」の提唱で知られており、
偶発性を招く上で大切なのは以下だそうです:

1.好奇心
2.持続性
3.楽観性
4.柔軟性
5.冒険心

「うまくいく」と心の中で信じつつ、上記の5つを大切に
することで前に進めるのですね。

私は通訳の仕事を始めるまで、迷ったり愚痴を言ったりという
タイプでした。一人っ子だったこともあり、実家にいたころは
母を相手に数時間、グチグチグチグチ(以下省略)語り
続けたこともあります。結局堂々巡りをするだけで抜け道無し、
ということなどしょっちゅうでした。

しかし、通訳業に携わるようになると、「訳語が出てこなかった」
「誤訳をしてしまった」「直前で大量の資料」
「内容がチンプンカンプン」など、それはそれは
色々なことが生じてずいぶん心身ともに鍛えられました。

現場で失敗してしまった場合は誠意をもって最大限の改善策を
考え、対処していくしかありません。それを繰り返すうちに、
私自身、通訳の勉強をする上で「愚痴を言うぐらいなら勉強だ!!」と思うように
なりました。悩む時間はもったいなく、迷っているぐらいなら
英文1パラグラフで良いから音読した方が次につながると
思っています。

上記の5つを見てみると、通訳というのは「好奇心」を満たす仕事であり、
たとえ訳語が出てこなくても「持続性」を維持することに意義があり、
現場に立った以上は何とかなるという「楽観性」も必要であり、
突発的な事態になっても「柔軟性」で対応するものなのですね。
そして「冒険心」を楽しむことも欠かせません。

5つのキーワードだけをとらえて自分の仕事に当てはめてしまいましたが、
これもまた「冒険心」のなせる業なのかもしれません。

(「NIKKEIプラス1」日経新聞2019年12月14日土曜日)
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新聞と友人の数 この因果関係 [日々の暮らし]

先日の日経新聞に興味深い広告が出ていました。
広告主は一般社団法人日本新聞協会です。

新聞科学研究所がおこなった調査によると、
「友達が多い」と答えた新聞購読者は28.9%で、
非購読者は18.7%だったそうです。

「新聞を読むことで会話のネタが増えることはもちろん、
コミュニケーションに欠かせない語彙(ごい)力に
差がつくことも同調査で判明している」

このように分析されています。興味深いですよね。

確かに私自身、紙新聞の恩恵をずいぶん受けてきました。
仕事で必要なのはもちろんなのですが、
パラパラとめくっているだけで、思いがけない記事との
出会いがあります。医学や科学、スポーツなどに
疎い私であっても、とりあえず見出しをチェックするだけで、
今何が大事なニュースなのかが潜在的にインプットされます。
その蓄積をできるのが紙新聞の良いところです。

「なにも見た目を良くすることや趣味をふやすことだけが、
自分磨きではないということだろうか。」と
この広告では綴られています。

(日本経済新聞2019年12月4日土曜日夕刊)
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クリスマス! [日々の暮らし]

ヤンソンス訃報を詳しく伝えてくれたイギリスの音楽評論家が
Norman Lebrecht氏です。ご本人の運営するサイトSlipped Discには音楽関連の話題が
毎日アップされています。

先日貼られていたリンクが秀逸!
クリスマスとイギリス情勢をテーマに世界の話題が盛りだくさんとなった
アニメです。日頃からBrexitを始め世の中のことを知っていると
登場人物もわかるはず。残念ながら私が認識できたのはごくわずかでしたが、
大いに笑えました。

暗くて寒い日々を、このアニメで吹き飛ばせること間違いありません。

https://www.thetimes.co.uk/edition/news/morten-morlands-animated-cartoon-christmas-special-0k26nsrt3

Enjoy!!
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手紙から勇気をもらう [日々の暮らし]

日経新聞を自宅で購読しています。毎週土曜日には
別刷りが入るのですが、それ以外にも時々タブロイドサイズの
紙面がついてくることがあります。

先日届いたのは「日経REVIVE2020」という紙面。
東京駅・丸の内界隈を特集していました。
巻頭インタビューはオリンピックの金メダリスト、
荻原健司さんです。スキー・ノルディック複合の
選手を経て現在は指導者として活動なさっています。

多くの快挙を遂げてきた荻原さんですが、大学時代を
このように振り返っています。

「初めて金メダルを取ったのが大学4年のとき。
同級生らが就職する時期にスポーツに打ち込むのは、
社会から取り残されるようで不安でした。
そのとき、手紙からどれだけ勇気と元気をもらったことか。
スポーツで生き、人の役に立ちたいという決意が生まれた
瞬間です。」

私も手紙を書くのが好きで、いただくのももちろん大好きです。
いまだに実家の母とは手紙でやりとりしているほどです。

手紙には不思議なパワーがあります。メールとは異なり、
自分が書いて相手の元に届くまで数日かかります。
すぐに相手が返事を書いて投函してくれたとしても、
やはりさらに何日かを要します。返事が来るかなと
想像することは楽しいですし、たとえお返事をいただけなくても、
自分が「書く」という行為を通じて頭の中を整理できます。
そのプロセスが私は好きなのですね。

「今できることをひたすら続けることで、
夢はかなう」と述べる荻原さん。49歳の現在も
国民体育大会に出場しているそうです。

(「日経REVIVE2020」2020年1月号)
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おてもと [日々の暮らし]

先日、スポーツクラブのレッスンに出る前に近くの
イートインコーナーで昼食をとりました。
レジで「お箸はお付けしますか?」と尋ねられたので
「お願いします」と答えて会計を済ませました。

テーブルに座り、いざ食べ始めたときのこと。
お箸の袋を改めて眺めると「おてもと」と
ひらがなで書かれています。私にとっては
あまりにも当たり前の光景ですが、考えてみたら
「『おてもと』はお付けしますか?」とは
言いませんよね。

気になったので手元の電子辞書で「おてもと」を
調べてみました。

広辞苑には「会席・料理屋などで箸(はし)の称」
とあります。一方、明鏡国語辞典には「料理屋などで、
客の使う箸(はし)」と書かれていました。
漢字では「御手元・御手許」と記します。

日本語学習者の間でもこの話題がありました:

https://japanese.stackexchange.com/questions/15134/on-%E3%81%8A%E3%81%A6%E3%82%82%E3%81%A8-and-its-many-variants-for-chopsticks

以下の記述がわかりやすかったですね:

“おてもとdoes refer to chopsticks but it is not
'another word for chopsticks.' That is, you won't say
おてもとを取ってください nor 新しいおてもとを買ってこようかな.”

このサイトに出ていた「おてもと」の写真は紙袋ですが、
私が使った割りばしはビニールに入っていました。
うーん、これからは割りばしのパッケージや
「おてもと」のフォントにも注目したくなります!
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NHK「世界へ発信!ニュースで英語術」掲載のお知らせ [掲載]

2019年12月18日放送分の翻訳・解説を担当いたしました。
タイトルは「吉野さん ノーベル化学賞を受賞」です。

https://www.nhk.or.jp/snsenglish/news/n191218.html

どうぞよろしくお願いいたします。

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チョーク界のロールスロイス [日々の暮らし]

先日CNNの放送通訳シフトに入った際、番組の合間に
興味深い動画が流れました。

https://www.youtube.com/watch?v=PhNUjg9X4g8

これはGreat Big Storyという動画提供企業が制作したもので、
世界各地からの珍しい話題や美しい光景などが取り上げられています。
調べたところ、CNNが2015年に始めた事業でした。

今回テーマとなっていたのは「チョーク」。
登場する方々はアメリカで数学を教える大学教授たちです。
日本の「羽衣チョーク」がいかに優れたものであるかを
熱く語っています。

"It's the Rolls-Royce of chalk"と語る先生もいれば、
「日本から誰かにわざわざ持ってきてもらう以外に
手に入れる方法がなかった」と述べる研究者もいました。
「このチョークを使うことでエネルギーが沸き上がる。
自分に自信が出てくる」と語っている先生もいます。
数学界では「羽衣チョーク」がちょっとした社会現象に
なっていたそうです。

ところがこのチョークを作っている羽衣文具は後継者不在により、
2015年に自主廃業を決めました。これを知ったアメリカの数学者たちは
慌ててチョークの「爆買い」をしたそうです。
結局、羽衣文具はチョーク生産技術を韓国メーカーに
譲り渡し、廃業となりました。

私はこの動画で初めて羽衣チョークのことを知りました。
単なる「書くための道具」にとどまらず、アカデミック界を
うならせたチョークを作っていた会社が愛知県春日井市に
あったのです。廃業は残念なことですが、こうして
動画で取り上げられ、語り継がれていることは素晴らしいと
感じました。

ちなみに生前のマリス・ヤンソンスは自らが率いていた
バイエルン放送交響楽団を「まるでロールスロイスを
運転しているようだ」と絶賛していました。
今回のチョークの動画で「ロールスロイス」という言葉が
出てきて、ヤンソンスを思い出したのでした。
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