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不言実行 [日々の暮らし]

通訳デビューして間もないころのこと。
「資料は一切ありません」とクライアントから言われて
当日になったものの、いざ会場に到着するや分厚い資料が
通訳席にデーンと置かれていたことがありました。

「ええっ?一つもないって言っていたのに、こんなに?
ならば昨晩でも良いから送ってほしかった・・・」と
絶句しました。通訳開始まであと1時間弱。
どう考えてもこれにすべて目を通すことは不可能に見えました。

心臓はドキドキするわ、送ってもらえなかった恨みつらみの念は
心の中で沸き上がるわ、自分の実力だけではどう考えても
太刀打ちできなさそうだわ等々、心身ともにひっ迫状態となりました。

そのとき、ご一緒した先輩が「では資料の〇〇ページまでは私が、
△△ページまではそちらにお願いするとして、次のXXページまでは私がやりますね」
と言い、超速で割り振りしてくださったのです。
そしてその先輩は即座に資料の読み込みを始めました。

正直、びっくりしました。と言いますのも、私としては
その先輩も資料到着の遅さや緊張感などについて私と同じ考えで
いらっしゃると思っていましたし、その思いを言葉にして
その場で話す、つまり口頭でグチの共感をしてストレス発散を
するであろうことを私は内心期待していたからです。

そのとき私は大切なことに気づかされました。

それは、目の前のことを嘆いても仕方がない、ということです。
今、できる最大限の解決策は何かを必死になって考え、
それを実行するしかないのです。そのことを先輩は新米の私に
自らの行動を持って示してくださいました。

私はそのときの先輩の姿を今なお鮮明に覚えています。
そして日常生活においても、見習うべき姿だと考えます。

たとえば家事においても、家族間のやりとりでもそうです。
朝になって「お母さん、やっぱり今日、お弁当いるんだった。
作って~」と言われた場合、以前の私であれば如実に
ネガティブモード全開で反応していました。「ったく~、
わかってたのならどーして昨晩のうちに言ってくれなかったの?」
という具合です。しかもこちらが忙しい日に限ってこういう展開に
よりによってなるのですよね。

で、どうなるかと言うと、私はひとしきり子ども相手に
ブツブツ言いつつお弁当を作り始めて完成させる、という
のがこれまでの展開でした。

でも「嫌々モードで結局成し遂げる」のであれば、
「ネガティブモードはとりあえず脇に置いておき、
やるべきことを成し遂げる」方が双方にとって気持ちよいはずです。
あとは完了後に「今日は作れたけど、これからはちゃんと前日に確認して
余裕を持って知らせてね」というメッセージを伝えれば良いのです。

一度目で伝わらなくてもあきらめず繰り返し伝えていく。
口頭で伝わらないならメモなりメールなりLINEなり、
「本人が理解する方法を理解するまで」用いることを
続ける以外方法はありません。こちらで怒ったところで
エネルギーをロスするだけです。

先の先輩が私に示してくださったこと。それは、文句を
言う暇があるなら不言実行で取り組むべし、というものでした。
有言実行ももちろん大事ですが、最悪なのは有限不実行。
一番本人にとっても周囲にとっても有益なのは不言実行だと
私は考えています。そして少しでもそれに近づきたいと思います。
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