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腕時計 [日々の暮らし]

9月にロンドンを旅行中、ずっと身に付けていたのが
オメガの腕時計です。大学卒業後、KLMに入社した際、
限られた予算で購入したアイテムです。オメガの中でも
一番お手頃価格のもの(それでも購入には勇気がいりました)を選び、
旅先のロンドンで買い求めました。

以来、私の左手にはこの時計がありました。
数年に一回、電池が切れれば銀座のショップに持参していました。
電池交換も、他の時計と比べれば決してお求めやすい金額では
なかったのですが、それも覚悟の上で毎回電池を入れて頂いていました。
オーバーホールをした際には、翌月のクレジットカード明細書に
多少驚かされたこともあります・・・。

3か月前のロンドン旅行では不思議なことが起きました。

このブログでも書いたのですが、ヒースローから帰国の途に
つこうとしている際、突然電池が切れてしまったのです。
出国手続きもして少し時間があり、カフェで軽食を
とっていたときのこと。時計を見ても先ほどと時間が変わらないのです。
慌ててスマートフォンの時計を確認したところ、
30分ほど経過していました。ヒースローのターミナル内には
取り立てて大きな時計も見当たらず、出発アナウンスもありません。
気づかなかったら乗り遅れていたところでした。

「10日間のロンドン・アムス旅行で腕時計も事切れてしまったのかなあ」
と思いつつ、無事に搭乗して帰国しました。

さあ、電池を何とかせねばと思ったものの、とりたてて
銀座まで行く仕事用事もありません。忙しかったこともあり、
わざわざそのため「だけ」に行くのも憚られました。

どうしようかなあと悩みつつ、やはり腕時計がないのは不便です。
私の場合、デジタルではなくアナログ時計が好みですので、
とにかくメーカーは何でも良いのでとりあえず新調しようと考えました。

ちなみにオメガの時計には秒針がなく、今回のように突然止まった場合
気づきづらいのがネックでした。「ブランド時計も素敵だけど、
やはり実用的な時計の方が良いのではないか」と考え、
近所の量販店で手頃な腕時計を手に入れました。
表示面も大きく、もちろん秒針も付いています。
しばらくこれを付けて暮らす日々が続きました。

けれども11月末になり、考えが変わりました。きっかけは
KLMの同窓会に出た事でした。当時の仲間や先輩が今なお
元気に活躍されている姿を見て、昔の自分を思い出したのです。
あのころの私の腕には常にこの腕時計がいました。
そのことが愛おしくなったのでした。

ネットで検索したところ、オメガが宅配修理サービスを
していることを知りました。数年前には確かなかった新サービスのようです。
迷わず申し込み、せっかくですので大々的なオーバーホールも
お願いしました。

電池交換作業が完了するのを待つ数日の間に、敬愛する指揮者の
マリス・ヤンソンス氏が亡くなりました。
氏のコンサートを初めて見た時も、その後は半ば追っかけのようにして
何度も聴き入ったコンサートの際にも、この腕時計は私と一緒でした。

「やはりオーバーホールに出して良かった。またこの時計と共に人生を
歩んでいこう」とヤンソンス・ショックの中、私は考えました。

ところで人間というのは何か大きな出来事に遭うと、心をいやす色を
求めるように思います。訃報後の私が思いついたのは「赤」でした。
赤い色には人を元気にするパワーがあります。無意識のうちに
それを欲していたのでしょう。

かつて私は真紅のロングコートを持っていたのですが、
重かったこともあり、数年前に実母に譲っていました。
そのことを思い出し、ヤンソンスの訃報の後に
「もしあのコートが残っていればまた使いたい」と母へ連絡
しました。しかし母からの返事は、毛玉がひどくて重たかったので、
あいにくチャリティショップに出してしまった、
というものでした。母も非常に申し訳ながっていました。

そして昨日のこと。

思ったよりも早くオメガの時計が戻ってきました。
梱包を開けると、真っ先に目に入ってきたのが真紅のケースでした。
オーバーホール済みの腕時計は、この立派な真紅の細長いケースに
入れられて私の元に戻ってきたのです。

たまたまなのかもしれませんが、とても嬉しく思いました。
先程慌ててネットを改めて見たところ、オメガのテーマカラーが
赤だったのですね。偶然とはいえ、この一週間、色々と考える日々が
続いていた分、この「赤」にとても励まされたのでした。
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