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demanding [日々の暮らし]

ロンドンで大学院生活を送っていたころ、課題の多さと
プレッシャーについてクラスメートとこぼしあったことが
あります。非英語圏から来た私だけかと思いきや、
ネイティブで、しかもその分野に精通していた院生たちでさえ、
口々にその大変さを述べていたのです。私としては
意外でしたね。

そのときによく出てきた単語の一つがdemandingです。
「要求が高い、大変だ」といったニュアンスです。
This course is so demandingなどのフレーズをよく耳にしました。

先日BBCのRadio 3で聴いたヤンソンスのインタビューでも
この言葉が出てきました。10代にレニングラードへ移住し、
音楽大学で学んでいたときのことを振り返っていたものでした。
「大変ではあったが(demanding)、非常に素晴らしい
音楽教育を受けられて良かった」という趣旨を
ヤンソンスは述べています。

ところで過日担当したCNN World Sportsでは興味深い
ニュースがありました。NFL出身で現在はCNNのスポーツ記者を
しているCoy Wire(ちなみに日本人の血が流れているそうで、
名前のCoyは「恋」から来ているそうです)の体験レポートです。

彼が体験取材したのは海軍士官学校のトレーニング。
午前2時半から翌日の午後2時半まで行われるSea Trialsという過酷な訓練です。
Coy自身体力がありますが、それでも非常にきつかったと
番組で述べていました。「頭の中で常に『一体なんで
こんなことを自分はやっているんだろう?』『きついんだから
やめちゃったら?』ということばが常にあった」と
語っています。

けれどもこれほど大変な訓練を仲間と共にやり遂げたという
達成感や自信も非常に大きかったと述べていたのでした。

Coyによれば、近年はアメリカでもスポーツ選手が弱弱しく
なったと感じるそうです。その理由として、監督が
昔と比べて厳しくしづらくなったからとのこと。
以前であればきついトレーニングを課していましたが、
最近はそうしようものなら、あとでロッカールームで
陰口をたたかれてしまうというのですね。
監督も人間ですので、悪く言われるのは辛いのでしょう。

そう考えると、芸術、学問、スポーツなど様々な世界において
昔であればdemandingだったことも最近はそこまで要求されなく
なってきたように感じます。たとえば以前であれば必死になって
単語を暗記して厳しい通訳訓練に耐えてといった指導法も
今では廃れてしまっています。暗記しなくてもネットで
調べれば即座にわかる時代なのです。

それはそれで時代の流れなのでしょう。けれども私自身振り返って
みれば、あの辛い辛い大学院生活は自分にとって今や
宝物です。あの日々があったからこそ、ヤンソンスの指揮に
感動したのでしょうし、ロンドンにおける外国人留学生
としての孤独感(今より留学生が少ない時代でした)を味わうことが
できたのです。ギリギリのところに追い込まれていた分、多くのことが
心の中に染み入り、物事を考えるきっかけになったのだと
思っています。

demandingということば。

そのさなかにいる者にとっては大変なことですが、
私はそれでもそこに意味を見出したいと思っています。

Coy Wire記者のインタビュー動画です。私が担当した日付よりも
かなり前にすでに類似の動画がアップロードされていました:

https://edition.cnn.com/videos/tv/2019/10/15/coy-wire-sea-trials-navy.cnn

いやぁ、すごいです!!
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