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完璧を求めない [仕事]

通訳の仕事というのは、業務を依頼された時点で開始となります。
当日のパフォーマンスの出来不出来は予習いかんにかかります。
通訳者の報酬「だけ」を見ると、確かに一見良さそうな金額に見えるかも
しれませんが、それまでの準備すべてに費やす時間や勉強関連の書籍購入などを
考えると、はたしてその金額が「魅力的」と言えるかどうかはわかりません。
それでも通訳者たちがこの仕事を続けているのは、ひとえに
「新しいことを学ぶのが楽しい!」という好奇心によるところが
大きいと思います。

大学入試や資格試験のように、出題範囲が決まっていれば
通訳の仕事も非常にやりやすくなります。しかし、そうでないのが
この仕事の魅力でもあり、難点でもあります。

以前、このような経験をしました。

ビジネス関連の通訳であったのが、いつの間にか文学談義や
芸術談議になっていたのです。
こうなりますと、いくら予習をしていたとしても、
教養的な知識も求められることになります。社会人として、教養人としての
自分が問われることになるのです。だからこそ、通訳者にとっては
「すべてが学び」になるのですね。

それでもついつい「できる限り準備を完璧にしてから
本番を迎えたい」という思いにはかられます。私など心配性ですので、
どこまで勉強しても足りないといつも不安感を抱いています。
そして時間切れとなり、当日へ。もちろん、杞憂に終わることもありますが、
たいていは帰り道、「ああ、今日も訳せなかった・・・」という
敗北感と共に帰宅することも少なくありません。

ただ、大事なことは「完璧を求め過ぎない」ことだと考えます。
なぜなら、そもそも「完璧」というのは人間の脳の場合
あり得ないからです。AIであればひたすらデータをインプットすれば
限りなく完璧な状態に近づけるでしょう。でも人間は違います。
完璧を求め過ぎて自滅してしまうのは本末転倒です。

新たな通訳業務から、それこそスマートフォンのアプリや
IT機能に至るまで、世の中にはまだまだ私自身、知らないことが
たくさんあります。不慣れであればあるほど、不安になります。

けれども「出来ない→完璧をめざそう」とすると、着手前から
心が折れます。自分にとって「未知である、そもそもできないのだ」ということを
潔く認める。試行錯誤しながら慣れていく。それしかないなあと
思っています。
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