SSブログ

出口治明さんの新刊 [日々の暮らし]

ここ数週間、注目している書籍があります。出口治明さんの
「還暦からの底力」(講談社現代新書)です。
出口さんと言えば、読書家として知られており、もとは
保険業界の方でした。数年前から現在に至るまで、
立命館アジア太平洋大学の学長を務めておられます。

数年前、NHKの「SWITCHインタビュー達人達」
という番組で、出口さんとミムラさんが対談をしておられました。
年齢も職業も違うお二人の共通点は「読書」。非常に示唆に富む
内容で、お二方の語りから本の素晴らしさを改めて感じました。
穏やかで、それでいて自分というものをしっかりとお持ちの
お二人が印象的でした。

そのようなことから、出口さんのご活躍には注目しており、
この講談社の最新刊も早く読みたいと思っていました。
が、書店では見つからずということが続いていたのですね。

先日のこと。日経新聞の紙面下4分の1ぐらいの大きさで
この書籍が出ていました。様々な書店でベストセラー第一位と
なっており、すでに15万分も売れているのだそうです。

広告に出ているいくつか印象的な抜粋をご紹介します:

「人生は愛情や友情の獲得競争」

「『悔いなし貯金なし』、それでも経済的不安がない理由」

「人生百年時代の60歳は『マラソンの折り返し地点』」

一方、この広告には読者の方々の読後感想もたくさん
掲載されていました:

「『人間死んだら物質に戻り、土に還る』という著者の言葉に
救われました」

「こんな時代には、キャリア設計よりも、何があっても
生き抜ける『適応力』の方が大事」

「『人・本・旅』の人生に切り替えるのは早ければ早いほどいい」

私はまだ本書をじっくり読む機会にありついていないのですが、
こうして書籍の広告や読者の感想を読むだけでも、
大いに励まされます。近いうちに本書を読んでみるつもりです。
コメント(0) 

推進力 [日々の暮らし]

日経新聞に連載されているプロトレイルランナー・鏑木毅さんの
コラムは欠かさず読んでいます。6月24日付の本文も
読みごたえがありました。
「夢舞台の中止と喪失感」というタイトルです。
インターハイや高校野球が中止となり、失意の中にいる
高校生たちに思いを寄せる文章から本文は始まっていました。

今回のコロナにより、当たり前だったことが当たり前では
なくなりました。大会の中止もその一つ。
そうした際、大人たち、たとえば監督などは選手に対して
「このくやしさをバネにして」「早く気持ちを切り替えて」
といった言葉を投げかけることが多いようです。

けれども鏑木さんは、そうした声掛けに対して
一歩引いた見方をしています。

「悔しい思いを次の人生の糧にといわれたところで、
その舞台さえ得られない彼らはそう簡単に割り切れるだろうか。」

このように述べています。

実際、鏑木さんも同様の体験を若いころされたそうです。
そして、そんな気楽な言葉をかけた大人に直接反発した
様子が今回のコラムには綴られていました。

しかし、年齢を重ねるにつれて、鏑木さんはこう
思うようになったそうです:

「私の鬱屈した思いとは無関係に時間は流れていたのだと知り、
ずっと引きずっていた自分がばからしくなった。」

「悔しさをそのもととなった事象や人に対してぶつけるのではなく、
悔しいという気持ちだけを忘れずに持ち続けようと心に決めた。
自分を支えてくれたのはまさしくこの『負のエネルギー』だった。」

私の場合、「何故この仕事を今に至るまで続けることができたのか?」を
改めて考えてみると、根底には「悔しさ」があったのだと思います。
幼少期に海外で受けた友だちからの理不尽な言動、
ことばが理解できない恐怖、帰国後の学校や集団生活に
おける違和感などなどです。それらの大元には
「状況をありのままに受け入れることのできない自分へのくやしさ」
だったのだと思います。

鏑木さんは、最後にこう述べています。

「人生が思うようにいかない、そんな経験に費やした時間、
注ぎ込んだ情熱が多ければ多いほど推進力も大きくなるような
気がする。」

大変な境遇に置かれてしまった、自分の力ではどうにもならないなど、
人は生きていると様々な状況に直面します。
でも、鏑木さんの言うように、その一方で人間には
「推進力」というものも備わっているのでしょうね。

非常に励まされる文章でした。

(「今日も走ろう」鏑木毅、日本経済新聞2020年6月24日水曜日夕刊)
コメント(0) 

ファウチ所長 [仕事]

新型コロナウイルスの蔓延がアメリカで見られ始めてから、
連日テレビでブリーフィングをしていたのが、
国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長でした。

小柄な体格で、トランプ大統領の横に立ち、
ダミ声で会見するファウチ氏の通訳というのは、私にとり、
当初は難儀するものでした。何となく聞きづらかったのです。
また、大統領と共にずらりと演壇に並ぶ人々というのは、
私からすれば、「あ、また例の大統領の取り巻きね、所詮」
という感じでもあったのですね。

ところが週を追うごとに私の見方は変わっていきました。
氏が大統領とは異なる見解を正々堂々と、真実として
述べていることに気づいたからです。

しかし数週間前のこと。このブリーフィングは取りやめとなりました。
と同時に、大統領とファウチ氏の不仲説も流れるようになりました。
そして現在に至っています。

ファウチ氏は「真実を国民に丁寧に述べる」というスタンスを貫いています。
それはFBIのコミー長官に通ずるものがあると私は思います。
相手が大統領であってもひるむことなく、
何が真実かを常に考えながら職務を遂行しているという
共通点があるのです。私はコミー氏の"A Higher Loyalty"という本を
読みましたが、読後に大きな感銘を受けました。
そこに出ているリーダー論はファウチ氏にも当てはまると思います。

ファウチ所長は2週間ほど前、CNNでWolf Blitzerのインタビューに
応じています。そこで、自らの職責のことや現在の様子などを
包み隠さず述べていました。コロナ対策の仕事は正直なところ、
「自分にとって疲労困憊するものである」のだと。「ほとんど寝られず、
慢性疲労状態にある、でもアドレナリンで何とかやっている」
とも述べていました。出来る限り体を動かし、外食ができない分、
地元のレストランのテイクアウトをして飲食店を応援している、
とも語っています。

私にとっては次の言葉がとても心に残りました:

"It's the life I have chosen, and I have no regrets about it"

どのような状況に置かれたとて、それは自らが選んだ
人生である。ゆえに後悔していないのだ、と。

ファウチ所長は現在79歳。この文章から、氏の覚悟が感じられます。
コメント(0) 

背伸びしたくなった曲 [日々の暮らし]

昨日のブログで、ジョン・カビラさんが人生における5曲を
インタビューで述べておられたことを書きました。
今回はそれに関連する話題です。

私にとって、人生に多大な影響を与えてくれた曲というのは
たくさんあります。ライフステージに応じて変化してきましたし、
ロックやクラシックなど、旋律を伴うものであれば、
実に多くの曲に私は自分の人生を支えてもらってきたと思っています。

何がきっかけだったのかは忘れてしまったのですが、
なぜか最近よく思い出す曲があります。
Brenda Russellの"Piano in the dark"です。

https://www.youtube.com/watch?v=H7u5GtSIC5k

この曲に付随して思い起こすのは、大学4年時に参加したニューヨークの
研修旅行です。日本人20名ほどの研修だったのですが、
全国の大学生や社会人が参加しており、1か月近く、
コロンビア大学の寮に泊まり、授業を受けたり色々な所を
見学したりするというものでした。

そのときに一緒に参加した社会人の女性の方が、
実にかっこよい方だったのですね。私より数歳上であられたのですが、
社会のことをよく知っておられて話も多岐にわたり、私は
たくさんの刺激を受けました。

その方の発案で、ライブハウスに行きました。
グリニッジ・ヴィレッジにあるBlue Noteです。私にとっては
人生初のライブハウス。しかもおしゃれなグリニッジ・ヴィレッジです。
すべてが刺激的でワクワクするような夜でした。
研修メンバー数名と出かけたのですが、彼女や、同じく
社会人の方々が私から見ると人生の大大大先輩に見えましたね。
当時の自分自身がとてもお子ちゃまに思えてしまうほどでした。

あのブルーノートで当日、誰が出演してどのような曲が演奏されたのか、
今となっては思い出せません。でも、あのような素敵でかっこよい女性に
なれたらよいなあという憧れの気持ちは、その後ずっと私の中に
存在し続けています。

ブレンダ・ラッセルの曲は、おそらくニューヨーク滞在中に
どこかで聞いたのでしょう。ゆえにブルーノートと結び付けられて
思い出されるのかもしれません。

私にとって、人生において「背伸びしたくなった曲」でもあるのですね。
コメント(0) 

「すぐ使える英語表現」更新のお知らせ [掲載]

第226回は a bridge too far (野心的過ぎる)というフレーズです。

https://www.hicareer.jp/inter/housou/17846.html

どうぞよろしくお願いいたします。

コメント(0) 

タイムマシーン [日々の暮らし]

過日、地下鉄駅のラックで手に入れたのが
「メトロミニッツ」というフリーペーパー。
東京メトロの広報誌的な役割を果たしています。
ラジオのJ-WAVEと提携しているのでしょう、その話題も
沢山載っています。

第211号(7月号)で印象的だったのが、ナビゲーター、
ジョン・カビラさんのインタビューでした。

カビラさんは今年5月、喉のポリープで
手術を受けて静養しておられたそうです。知りませんでした。
ポリープを機にカビラさんは「普段当たり前だと思っていた暮らしが当たり前ではない」
ということを痛感されたそうです。

また、「父と母からもらった声のおかげで、こうして
ラジオの仕事をいただけている」と周囲への感謝も
述べておられます。

私自身、振り返ってみると、とりたてて大きな病気や
ケガに見舞われず、今に至っています。でもそれは、実は
たくさんの偶然と奇跡の積み重ねのおかげなのでしょうね。
そのことを心から感謝しなければと感じます。

ところでこのインタビューでカビラさんは自らの
お気に入りの音楽を5曲挙げています。「聴くことで
タイムマシーンに乗ったような効果が得られる曲」として
選んだそうです。

私も自分の人生に影響を与えてくれた5曲を考えてみようと
思いました。

(「メトロミニッツ」2020年7月号、第211号)
コメント(0) 

美しいもの [日々の暮らし]

先日のこと。どうしても欲しかったものがありました。
お花の写真のポストカードです。文具店をあちこち
覗いて探してはみたものの、目的のお花のものは見つかりません。
うーん、どうしようかなあと思っていたところ、
ふとひらめきました。今の時代はネット通販というものが
あったのですよね。早速、検索してみたところ、いとも
簡単に見つかりました。オーダーしてすぐに郵送され、
あの「文房具店ハシゴ」は何だったのかしらというぐらい、
あっさり手に入ったのでした。

以来、その通販ショップからは私の元に新商品紹介のメールが
届きます。ちなみに私はかつて断捨離に励んでいたころ、
モノだけでなくメーリングリストからも名前を外してもらっていたほどでした。

けれども最近は少し価値観を変えつつあります。自分にとって
美しいもの、素敵なことであれば、単に数を減らしたいがためだけの
断捨離にする必要はないのですよね。

よって、このメールもそのまま残しています。

毎日届くこの通販会社のメール。
写し出されるアイテムの写真はどれもこれも美しく、
アクセサリーから洋服、家庭雑貨などに至るまで、
新進気鋭の作家さんたちが次々と新作を発表していることがわかります。

コロナの緊急事態宣言も解除され、少しずつ日常生活に
慌ただしさが戻ってきています。電車の人混みも前より
明らかに増えています。私自身の仕事も、春先と比べると
以前のような感じに復活しているような印象です。

そうした日々に入ってきたからこそ、毎日届く美しい写真を
眺めて深呼吸し、自分の心を落ち着けたいと考えます。

朝のお散歩中に見かける季節の花や樹木

店頭に並ぶ素敵な商品

メーリングリストで届く魅力的なアイテムの写真

「美」は人の心を潤わせてくれるのだなと思います。
コメント(0) 

落語家と通訳者、その共通点 [日々の暮らし]

月の後半になると楽しみにしているものがあります。
地下鉄駅構内で配布されるフリーペーパーです。
「メトロミニッツ」という誌名で、スターツ出版が発行しています。
ページをめくると地下鉄に関する話題はもちろんのこと、
グルメからトレンド、書籍紹介などなど盛りだくさんです。

7月号の特集タイトルは「日々、笑い。」。
落語家・桂宮治さんのインタビューが印象的でした。
桂さんは前職が化粧品のセールス。ある日動画サイトで
観た落語に触発され、「一生の仕事にしたい」と思ったそうです。
そして弟子入りしたのが31歳の時だったと語っています。

私にとっては次の文章が心に残りました。

「お客さんを1秒たりとも退屈にさせられないんです。
一瞬でも飽きさせたら帰られるっていう恐怖感が染み付いてて、
高座でも連続で笑わせたり、惹きつけて、この噺をずっと聞いてたいって
思わせようとしてるし」

うーん、まさに通訳者の心境!!私自身、1秒どころか
0コンマ数秒でも空白が生じると、「このまま一生、私は
訳語が出てこないで詰まったまま沈黙をしてしまうのでは」
という恐怖心が常にあるのですね。もちろん、そんなことには
ならずに済んではいるのですが、この仕事を数十年続けてきた
今でもなお、こうした不安と隣り合わせで日々マイクに向かっています。

ただ、その一方で「間(ま)」をとることも強烈に
意識しています。ある心理学の本で読んだのですが、
人間というのは「7つ」の情報しか最大限、頭に同時に
入らないそうです。つまり、通訳者がマシンガンのごとく
全てを拾って訳出したとて、あまりにも早口になってしまえば、
それは聴き手の右耳から左耳にそのまま抜けてしまうのです。

1秒の空白への恐怖心。

その一方で、間をとる大切さ。

考えてみれば、機械にアソビが必要なように、
通訳アウトプットから日常生活における人間関係、家事・育児
などにいたるまで、すべてにおいて詰め込み過ぎると
息が詰まってしまいます。

ゆえに空白への恐怖心に打ち勝つぐらいの心の強さが
欲しいなあと個人的には思っています。

(「メトロミニッツ」2020年7月号)
コメント(0) 

NHK「ニュースで英語術」掲載のお知らせ [掲載]

2020年6月23日放送分の翻訳・解説を担当いたしました。
タイトルは「北朝鮮 南北連絡事務所を爆破」です。

https://www.nhk.or.jp/gogaku/news/2006/23.html

どうぞよろしくお願いいたします。

コメント(0) 

「通訳者のひよこたちへ」更新のお知らせ [掲載]

「通訳者のひよこたちへ」第449回がアップされました。
タイトルは「気持ちの表し方」、
書籍紹介は「星宙の飛行士 宇宙飛行士が語る宇宙の絶景と夢」
(油井亀美也、林公代、JAXA著、実務教育出版、2019年)を取り上げています。

https://www.hicareer.jp/inter/hiyoko/18220.html

お時間がございましたらご一読いただければ幸いです。

コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。