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家族の中から民主主義 [日々の暮らし]


昨日の日経新聞で法政大学の田中優子・前総長が
インタビューに答えておられました。

政治家と官僚について、以下のように田中先生は述べていらっしゃいます:

「どちらかが一方的に強くなる必要はない。
官僚の人事権を政治家が過剰に握るのは良くない。
両者が調整しながら政策を進めることが重要だ。
要は民主主義が完成していない。(中略)
民主主義の基本である徹底的な話し合いが足りていない」

私はこの文章を読み、家族内の問題にもあてはまるのでは
と思ったのですね。「政治家と官僚」を「親と子」に
置き換えて解釈してみると、

*親が子どもに対して過剰に支配権を有するのは良くない
*親子が調整しながら家族間の問題を話し合っていくことが重要
*親子間でも民主主義が完成していない
*親子間では徹底的な話し合いが必要

このようになります。

一方、田中先生は法政大学を改革される上で、
教職員との対立を恐れず、未来に向けてしっかりと話し合いを
続けられたそうです。こう述べておられます:

「対立を避けずに議論したことで危機感が共有され、
改革する覚悟ができた」

ところで日本では古くから儒教の思想で「長幼の序」がありますよね。
これは「年少者は年長者を敬い、年上は年下を慈しむ」という意味です。

しかし、昨今の家族問題から生じる悲しい事件、たとえばネグレクトや
ハラスメントというのは、「長幼の序」が存在することから
親が絶対的な支配権を子に有すると思い込み、
子はそれに抵抗ができず、ゆがんだ結果生じてしまうと私は
思っています。

私が敬愛する精神科医の故・神谷美恵子先生は、二人の息子さんたちを
「社会から授かった」と表現していました。世の中の親御さんたち
誰もがそのような大局観的な見方ができれば、親子関係も愛情に
溢れたものとなると私は思います。しかし、親が子どもに権威だけを
振りかざしてしまった場合、徹底的な話し合いは難しくなり、
「危機感」も共有されず、家族として改革・進展していくことも
難しくなると思うのです。

民主主義というのは、国家や社会だけではなく、
身近な「家族」という組織の中にも存在する。

田中総長の文章から、その気づきをいただきました。

(『最悪想定し長期展望示せ』前法政大学総長・田中優子氏
「ニッポンの統治」日本経済新聞2021年12月4日土曜日朝刊)
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