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「優しいガンコ」

月数回シフトで入るCBS Evening News。この番組は
TBS Newsというチャンネルで放映されています。
テレビ局は地下鉄千代田線の赤坂駅の真上にあります。

この通訳業務で私が密かに楽しみにしていることがあります。
それはテレビ局近くのカフェでの朝食です。

実は私は昔からパンが好きなのですが、中でも
「厚切りトースト」に目がありません。
せっかくの早朝シフトですので、あえて少し早めに
自宅を出発し、局入りする前に厚切りトーストの
美味しいカフェで朝食を味わうことを自分への
モチベーションとして実施しているのです。

TBS近くにはいくつかカフェがあり、色々と試して
きたのですが、最近気に入っている所のトーストは
少し小ぶりで食べやすいサイズです。満腹になりすぎて
しまうと頭がボーっとして同時通訳がしづらくなるため、
私にはちょうど良いサイズです。

さて、そのカフェのお隣には某私鉄系列のビジネスホテルが
あります。私は幼いころ、その私鉄沿線に暮らしていました。
7歳の時にアムステルダムへ引っ越す前のことです。
よって、その鉄道には特別の思い入れがあります。

先日のこと。カフェに入店する前にホテルロビーに立ち寄った
ところ、その私鉄の広報誌が置かれていました。
鉄道名を見るやますます懐かしくなり、一部いただくことに。
パラパラとめくってみると、実に内容豊富なPR誌です。

その号で特に印象的だったのは、絵本作家シゲタサヤカさんの
インタビューでした。シゲタさんは料理や食べ物を
テーマに描き続けておられる方です。

絵の特徴は「眼が白目であること」。そう、目の中の瞳が
塗られておらず、〇だけなのですね。

シゲタさんは、編集者とかつてやりとりしたエピソードを
語っています。それによると、やはり編集サイドから
すれば目は黒目の方が良いとのこと。それを指摘されて
いったんは打ち合わせから自宅へ戻ったものの、
やはりご自分にとっての白目は自分の作風であることから、
あえて修正をしなかったと述べています。
そのことについて編集者はこう述べたそうです:

「シゲタさんは優しいガンコですね」

穏やかなシゲタさんではあるものの、
変えないところは変えないというシゲタさんのポリシーを
さしての一言でした。

「優しいガンコ」

これはそう簡単にはできないかもしれません。
ついつい周りと妥協して我慢してしまったりということが
人間にはあるからです。

けれども、私自身、どうしても譲れない部分については
「優しいガンコ」でも良いのだろうなあと
感じた次第です。

(「相鉄瓦版」第265号、2020年1月、
相鉄ホールディングス発行)
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