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手のひら通訳 [仕事]

今週に入ってからAbema TVで放映されているテニスの
男子国別選手権ATP Cup 2022の同時通訳を担当しています。
選手の優勝インタビューです。

日本と豪州シドニーは時差が2時間。よって、
昼間開催の試合と夜開催の試合いずれも、ほとんど
日本と時間は変わりません。試合中は控室で試合の
展開をPCで見つつ、日本語の実況中継および解説を聞き、
ネットで選手のデータを調べたりして過ごします。
朝から真夜中までの業務ですが、同時通訳をしている瞬間以外は
待機です。

日ごろニュースの同時通訳に携わる私は、
特派員が取材をしてきた数分間のレポートを通訳するのが
大好きです。わずか2分ぐらいの長さですが、
各記者が原稿を練りに練って作り上げ、それを
映像とともに合わせて読み上げているのですよね。
画面の流れと特派員の文言を日本語同通でもなるべく
ずらさず、レポートの「意図」を伝えたいと思って
通訳をしています。

こうしたニュース通訳も気合が入るのですが、
今回のような試合直後のインタビューなども燃えます。
何しろ選手はわずか数分前に勝利を手にしたばかり。
汗だくで息がまだ弾む中、喜びを体で感じながら
テレビカメラの前に立ち、取材側の質問に答えるのです。
勝った嬉しさ、ファンへの感謝、試合中に苦労したことなど、
色々な思いが選手の頭の中にはあるはずです。
それを出来る限り同時通訳で伝えたいと思うのですね。

同時通訳では「何も足さず何も引かず」が良し、という
考え方があります。でもこれも状況によりけりだと私は思います。
全てを訳出することに集中し過ぎて、選手の喜びを
同時通訳者の声に反映させなければ、あまりにも
無味乾燥になってしまう。一方、全訳にこだわり過ぎて、
選手なのか記者のどちらなのかわからないように
なってしまうのも興ざめです。

ゆえに私の場合、「とにかく画面の発言者の
タイミングとぴったり合わせること」を死守しています。

最近はスマートフォンですら音声認識ができます。
手のひらのスマホ上で同時通訳ができる時代も
そう遠くないでしょう。デジタルの能力は人間に比べれば
無限大にありますので、単語力・構文力などでヒトが
追いつくことはできません。

だからこそ、「気持ち」を汲み取り、同通に反映させたいと
思います。

ATP Cup 2022決勝戦は明日9日夕方からです。
集中力を研ぎ澄まして臨みたいと思います。
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