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「これは卒業しよう」 [日々の暮らし]

若いころ、その著作に触れて大いに影響を受けたのが
精神科医の神谷美恵子先生です。ハンセン病患者の為に
尽力され、代表作「いきがいについて」(みすず書房)は今なお
多くの人々の心に訴えるものがあります。

戦時中に20代を過ごし、結核にもなり、親の大反対を経て
ようやく医学の道を許された先生は、古典を原書で読み、
英語だけでなくラテン語やフランス語にも精通しておられました。
60代で病に倒れ、惜しくも亡くなられましたが、
大量の本を読み、執筆活動を続けていた様子は
みすず書房の「日記」などに記されています。

先生は、たとえ高価な本であったり、たくさんの書き込みをしてあったりする
本でも、自分にとってそれが過去のものになったのであれば、
惜しみなく手離したのだそうです。そのときの様子を
義理の娘さん(息子さんの奥様)が記していました。
玄関先に大量の本が紐でくくられていたのだと。そして
先生はそうした本について「これは卒業しよう」と口にされていたのだそうです。

ところで私は一つの大きな仕事が終わったときに
プチプライスのアクセサリーを手に入れることがあります。
仕事先からの帰路、エキナカにあるお店で数百円のものを買い求めるのですね。
私にとっては仕事終わりが一つの大きな節目ゆえ、自分へのささやかなご褒美
という位置づけです。

一方、「ちょっとしんどいなあ」というときに、自分を励ます意味で
そうしたアクセを買うこともあります。小さなストーンが付いていたり、
ゴールドでキラキラしていたり、そうしたものを見るだけで
元気が出るのです。自分が前進できるようにすることが第一目的です。

先日のこと。私は改めて自分のジュエリーボックスの中身を
見直してみました。そして、「辛かったころに手に入れたアイテム」を
手離すことを決めました。

それは「自分の人生が新たなステージに立った」ということなのだと思います。

「あの時は辛かった。でもその段階は過ぎた。だから
次へ行くためにも、あのアクセは卒業しよう」

そんな心境です。

購入時には「これを見ることで慰められる」という状態でした。
けれども、ひとたび自分の心が元気になると、私の場合、
今度はそれを見るたびにかえって辛さが再現されかねないのですね。

ならばこそ、潔く卒業する。次のステージへ歩み始める。

手に入れた当初、そのアクセは私が前に進む勇気をくれました。
そして今、新たな段階に立つ自分は、感謝の気持ちを込めて、
そのアクセにさよならしようと決めています。
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