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読書記録:"American Pandemic: The Lost Worlds of the 1918 Influenza Epidemic" [日々の暮らし]

Nancy K. Bristow著, Oxford University Press, 2012

昨日に引き続きパンデミック関連書籍。大学院で教わった読み方は
「新しい発行年のものから読む」。よって昨日の本より
数年前に出たのがこれ。今回も斜め読みですが
色々と得るものがありました。

著者のBristow氏は歴史学者。自身の祖父は子ども時代の
1918年スペイン風邪で両親を亡くし、いきなり孤児になったのだそう。
著者はスペイン風邪がアメリカの人々にどのような影響を及ぼしたかを、
膨大な証言資料から分析しています。

以下、興味深かった点:

*インフル流行を機に代替医療も盛んになる

*マサチューセッツ州医療当局者の1918年12月の記述:
「このインフルエンザの実情はあまりにも恐ろしすぎる。
活字に残すべきではないほどだ。」

*1880年から1924年までアメリカは多数の移民(含む日本人)を受け入れた。
ただ、スペイン風邪当時、移民の多くは戦地で従軍していたため、
「インフルエンザ=移民のせい」との差別・迫害を受けずに済んだ

*当時の医療当局者たちは「いずれ天気が良くなれば
流行もおさまる」と見ていた。過小評価していた者も
(←ん?今の大統領??)。

*資金と最終権限を持つのは為政者だが、具体的な計画を実施するのは
現地の医療当局。もっとも重要な鍵を握るのは市民が団結して
当局の方針に従うこと。

*アフリカ系・アメリカ人看護師にとって、スペイン風邪の
治療にあたることは、黒人としての地位を高めることにつながった。

*医師たちのキャリアにおいてスペイン風邪は非常に辛いものであった。
患者を次々と亡くすことはトラウマとなった。

*小説家キャサリン・アン・ポーターもスペイン風邪で重症に
(電子辞書で調べると、逝去は1980年)

*ある従軍医師の述懐:「多数の兵士を喪った。自分が非力であることを
謙虚に受け止めることとなった」

*****

最後に引用 (p198):

"While we will turn to scientists to determine the best way to
contain disease, and public health leaders to determine
the best way to protect and educate the public, it will be left to
others of us to remember and act on the human lessons of
the 1918 pandemic."

果たして私たちは今、1918年の教訓を十分生かしているか?

読了時に大きな宿題を与えられたと私は感じています。
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