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「あなた」ということば [日々の暮らし]

英語から日本語に訳す際、気を遣うことばがあります。
それは"you"という単語です。

辞書を引けば「あなた」という訳語が出てきます。
けれども日常会話において、私たちはあまり面と向かって
相手に対して「あなた」と言いません。特に相手が
目上や年上の場合、なおさら使うことはないでしょう。

「あなた」は文法用語で言うと「二人称代名詞」です。
Wikipediaの説明によれば、「日本語の共通語(標準語)には
一般的な二人称代名詞というものは存在しない」とあります。

では英日通訳の際にどうするか?

私の場合、どうしてもyouを訳さねばならないとき以外は
あえて省いています。その代わり動詞を敬語にします。
日本語は聴き手が察してくれる言語ですので、
そこを活用するのですね。

たとえばWhat is your plan?という疑問文であれば:

「どのような計画をお持ちですか?」
「ご自身の計画はどのようなものでしょう?」

などと訳します。どうしてもyouを入れるのであれば
「ご自身」や「みなさん」(相手が複数の場合)などを
使います。

一方、先日行われた参議院選挙の際、興味深く
感じた演説がありました。とある政党関係者がおこなった
演説です。

「あなたがいなきゃ この国は始まらない」

この「あなた」が私には新鮮に映ったのです。
多数の聴衆を前にした演説ですので、以前であれば
「みなさん」を使ったことでしょう。
あえて一人一人に訴えかけるという意味で「あなた」が
用いられたのではと想像しています。

ところで私は安倍総理の所信表明演説などの全文が
新聞に出ると、必ずチェックしています。中でも
特徴的だなあと思うのが、「~しようではありませんか」
という文章です。蛍光ペンで印をつけると、
数回出てきます。

人の話し方の特徴。
それをどう英訳するか。
なぜそのような日本語になるのか。

ことばを生業にしていると、すべてが私にとって教材となります。
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