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潔くあきらめる [仕事]

セミナーで質疑応答時間になった際、「通訳者か翻訳者、
どちらになるべきか迷っています」というお尋ねを受けることが
あります。「英語は好きだしそれを仕事にしていきたい。でも
どちらが自分に向いているのかわからない」というお悩みです。

この2つの選択肢を前に迷ったことは、私自身、経験が
あります。20代のころでした。通訳業務も好きなのですが、
その場で瞬間的に訳語が出てこず、悔しい思いをしたときに
この問いが頭の中に浮かぶのです。「翻訳であれば
じっくりと訳語を練れたのに」という無念さです。

運よく当時、通訳業務以外に翻訳の仕事を頼まれたことが
ありました。映像翻訳です。ドキュメンタリーの原稿を作成し、
読み合わせもしてナレーターが読みやすいよう、
尺合わせもして耳から聞いてわかりやすい語も練るという、
非常にやりがいのある仕事でした。じっくり調べ物も
できます。また、当時は子どもたちが小さかったので、
保育園に預けている間に集中して自宅作業を進め、
お迎えに行っていました。ワーク・ライフ・バランスが
とれる仕事でした。

けれどもしばらくすると私は行き詰まりを感じてしまいました。
これは自分の体の構造上の問題(?)だとも思うのですが、
どうも「家の中で一日中じっと作業をしていること」が
性に合わないと思えてきたのですね。歩いて駅まで出かける、
電車に乗る、街を行きかう人を眺める。そういった
何気ないことが、私自身の心に大きな影響と刺激を与えていると
改めて感じたのです。

映像翻訳も好きな作業でした。自宅で仕事ができるというのも
大きな魅力です。けれどもその時の私は、「とにかく外にまた
出たい!」という思いがどんどん募っていきました。
その結果、少しずつ外の通訳業務を増やし、自宅作業を
減らしていったのです。

あの時私は自分の価値観や能力を客観的にとらえ、
自宅作業は自分に向いていないと結論付けました。
その結果、翻訳に関しては「潔くあきらめる」という選択をしました。
それは今でも間違っていなかったと思っています。

自分には向いていない。
自分が想像していたこととは、やはり異なる。

そうした気づきが心の中で出てきたのであれば、
ズルズルと「現状」に引っ張られるよりも、
それを良い意味で「捨てて」次に進む勇気も必要だと思うのです。
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