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褒めて育てること [仕事]

私が子どものころというのは、教育の世界は今と大いに異なりました。
今のように「褒めて伸ばす」というものからは程遠かったのです。
先生は常に怖い存在。子どもたちは叱られないようにと
緊張していました。

確かに、これはこれで「けじめ」があったのかもしれません。
けれども時代によって価値観は変わります。
昔のやり方だけを押し付けたとしても、もはや後進が付いてこない
次代となっているのです。

これは教育現場に限りません。クラシックの世界でも同様だそうです。
そのようなことを指揮者のパーヴォ・ヤルヴィさんが述べていました。
以下、日経新聞のインタビューから印象的だった箇所を
ご紹介します。

「(首席指揮者は楽団員たちと)時間をかけてお互いを理解し、
信頼関係を築いていきます。信頼関係の構築に
近道はありません」

「(人間関係の築き方というのは)日々の仕事の中で、
失敗を積み重ね、試行錯誤しながら身につけていくしかないのです」

「指揮者が威圧的な態度だと、奏者のモチベーションは
上がりません。モチベーションが上がらなければ、
演奏にも響く。相手を脅して言うことを聞かせようとするのは、
非常に非生産的なやり方です。」

かつて私は若かったころ、通訳者デビューを果たすべく
スクールに通っていました。当時の指導はスパルタ方式。
講師も非常にオソロシイ存在でした。ヤルヴィ氏が言う
威圧的な態度は当たり前だったのです。けれども私はこれに
疑問を感じ、結局退学しました。伸びるはずの能力が
強権的な雰囲気のクラスでは発揮できないと感じたからです。

今、振り返ってみて思うこと。それはあの時の自分は
あの時点で最善の選択をしたのだ、ということです。
なぜならクラスの中で鬱々と過ごすのではなく、
自力でエージェントにダメモトでアプローチし始めることとなり、
それがデビューにつながっていったからです。

そう考えると、私に「動き出すパワー」を与えてくださったのは、
他でもない「威圧的な講師」だったのかもしれません。
途中経過が何にせよ、終わりよければすべて良しということになります。

ちなみにヤルヴィ氏の師匠は、あのバーンスタイン。
若きヤルヴィ氏の指揮を見るやバーンスタインは
"Great! Sensational! Fantastic!"と褒めちぎり、持ち上げたそうです。
そしてその後に改善個所を厳しく注文してきたとのこと。
褒められた後なので素直に聞き入れたとヤルヴィ氏は述懐しています。

(「私のリーダー論㊤」NHK交響楽団パーヴォ・ヤルヴィ首席指揮者
日本経済新聞2018年11月1日木曜日夕刊)
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