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作業と錯覚 [仕事]

通訳セミナーをすると、単語の覚え方についての
質問を受けます。どのようにすれば記憶できるのか、
また、単語帳はどう作成すれば良いのかといった問いです。

会議通訳では事前に短期間で膨大な量の単語を覚える必要が
あります。その記憶法についてはまさに通訳者個々人によるところが
多く、エクセルに入力してデータベース化する方もいれば、
紙に書き連ねるという先輩もいらっしゃいます。
ちなみに私は超アナログ派で「手で書く作業」そのものが
好きなため、今なお紙で作成しています。

ただ、準備段階で気を付けねばならないのは、
「作成作業=勉強した」という錯覚に陥ってしまうことなのですね。
一生懸命入力あるいは手で書き続けて膨大な単語リストが
出来上がると、それだけで大きな達成感を抱けます。
けれどもスタートはここから。単語帳作成はいわば
出発点ですので、どれだけ記憶するかが問われるのです。

これは単語帳作成だけではありません。私は後進の
指導にも携わっているのですが、授業用教材の訳文を
作成していると、ついつい仕事をした気分になってしまいます。
けれども大切なのは、訳文を練る上でどのような工夫をすべきか、
他の類似表現は何かなど、その訳文を土台としてプラスアルファの
内容を盛り込むことなのです。

単語帳や訳文作成という「作業」そのものだけで
達成感を錯覚しないようにと言い聞かせています。
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